事業税の社会保険診療報酬非課税とは?払いすぎを防ぐ3つの確認点

医療税務10年以上|医科・歯科40件以上を継続支援

「保険診療は事業税がかからないはずなのに、納税通知書が届いた」と戸惑う院長は珍しくありません。個人事業税でも医療法人の法人事業税でも、社会保険診療報酬に対応する所得は非課税です。ただし、自由診療や自賠責・労災の収入には課税されます。収入の区分や経費の按分を誤ると、払わなくてよい事業税まで納めるおそれがあります。この記事では、非課税の範囲と計算方法、払いすぎを防ぐ3つの確認点を解説します。

■ この記事の結論(先にお伝えします)

  • ・健康保険・国民健康保険などの社会保険診療報酬に対応する所得は、個人事業税・法人事業税とも非課税である
  • ・自由診療・自賠責保険・労災保険・健診などの収入は課税対象で、個人の医業・歯科医業は税率5%、事業主控除は年290万円である
  • ・個人開業医の事業税は、確定申告書や青色申告決算書・付表(医師及び歯科医師用)などの資料をもとに都道府県が計算する。社保と自由診療の区分を誤ると、税額がずれる
  • ・医療法人は特別法人として軽減税率(年400万円超の部分は標準税率4.9%)が適用され、外形標準課税の対象外である(別途、特別法人事業税がかかる)
  • ・納税通知書の税額が想定より高いときは、収入の区分と按分方法を税理士に確認してもらうのが近道である

事業税の社会保険診療報酬非課税の仕組み

事業税で社会保険診療報酬が非課税になる理由を、制度の中身・法律の根拠・これまでの経緯・他の税金との違いの4つの点から説明します。

事業税の社会保険診療報酬とは

事業税は、事業を行う個人や法人に都道府県が課す税金です。個人開業医には「個人事業税」、医療法人には「法人事業税」がかかります。個人事業税では、医業・歯科医業は「第3種事業」に分類され、税率は5%です。

この事業税では、社会保険診療報酬に対応する所得を課税の対象から外すしくみがあります。社会保険診療報酬とは、健康保険・国民健康保険・後期高齢者医療制度・生活保護などの公的制度に基づいて医療機関が受け取る診療報酬のことです。審査支払機関から振り込まれる分だけでなく、窓口で受け取る患者の一部負担金も含まれます。

つまり、保険診療から生まれた所得には事業税がかからず、自由診療などそれ以外の所得にだけ事業税がかかります。

社会保険診療報酬非課税の法的根拠

この非課税措置は、地方税法に定められています。法人事業税では、地方税法第72条の23第2項により、対象となる医療法人等の社会保険診療に係る収入を益金に、対応する経費を損金に算入しない取扱いが定められており、社会保険診療の範囲は同条第3項に規定されています。個人事業税についても、同法第72条の49の12第1項に対応する規定があります。

法律で定められたしくみなので、院長が都道府県に特別な申請をして認めてもらう必要はありません。個人開業医の場合は、確定申告書に添付する青色申告決算書の付表(医師及び歯科医師用)などに、社会保険診療報酬と自由診療収入を分けて記載します。都道府県はこうした申告資料をもとに、非課税分を除いて事業税を計算します。

事業税非課税措置の歴史と存続議論

社会保険診療報酬の事業税非課税は、医療の公共性を理由に長く続いてきた制度です。医療は国民皆保険を支える公共性の高い事業であり、診療報酬は国が決めた公定価格のため、医療機関が自由に価格へ税負担を転嫁できないことが背景にあります。

この措置は「医療機関だけを優遇している」として、政府税制調査会などで廃止や見直しが議論されてきました。それでも現在まで存続しています。

日本医師会は現在も毎年の税制改正要望で、社会保険診療報酬に係る事業税非課税措置の存続を求めており、令和9年度「医療に関する税制要望」にも盛り込まれています。現時点では存続していますが、毎年の税制改正大綱で扱いを確認しておくと安心です。

消費税・所得税と事業税の違い

社会保険診療報酬は、税金の種類によって扱いが異なります。

税金の種類 社会保険診療報酬の扱い
消費税 非課税(労災保険・自賠責保険の対象となる医療も非課税)
所得税・法人税 課税。ただし概算経費の特例(措置法26条・67条)を選べる場合がある
事業税 社会保険診療報酬に対応する所得は非課税

消費税では保険診療が非課税で、自由診療は原則として課税です。ただし、正常分娩などの助産に関するサービスには非課税の取扱いがあります(国税庁「No.6201 非課税となる取引」)。詳しくはクリニックのインボイス制度|保険診療と自由診療の違いは?で解説しています。

所得税は保険診療の所得にも課税されます。社会保険診療報酬が年5,000万円以下で、医業・歯科医業の収入が年7,000万円以下の場合は、実際の経費の代わりに法律で決められた割合の経費を差し引ける特例があります。詳しくは医師・歯科医師の概算経費(措置法26条)の有利不利を解説をご覧ください。

3つの税金のうち、所得そのものから保険診療分を外すのは事業税だけです。同じ「非課税」という言葉でも、消費税と事業税では意味が違う点を押さえておくと、申告書の確認がしやすくなります。

非課税になる社会保険診療報酬の範囲

事業税が非課税になるのは、法律で決められた公的制度に基づく診療報酬だけです。非課税になる収入と課税される収入を分けて見ていきます。

事業税が非課税になる診療報酬

非課税になるのは、次のような公的制度に基づいて行う診療の報酬です。

  • 健康保険・国民健康保険・船員保険
  • 国家公務員・地方公務員・私立学校教職員の共済組合
  • 後期高齢者医療制度
  • 生活保護
  • 難病法に基づく特定医療や障害者総合支援法に基づく自立支援医療など、地方税法上の社会保険診療に該当する公費負担医療
  • 介護保険のうち、訪問看護・訪問リハビリテーション・居宅療養管理指導・通所リハビリテーション・短期入所療養介護などの医療系サービス

公費負担の名称や支払元だけで判断せず、給付の根拠となる制度と医療の内容を確認してください。また、医療系の介護サービスに関連する収入でも、食費・居住費・滞在費などは社会保険診療報酬に含まれません(東京都主税局「医療法人等に係る所得金額の計算書 記載の手引」)。

社会保険診療報酬は、原則として、その年・事業年度に収入計上すべき保険者負担分と患者の一部負担金を合わせて集計します。源泉徴収がある場合は税引前の金額とし、年末・期末の未収診療報酬も確認してください。入院時食事療養費や保険外併用療養費の保険給付部分も、社会保険診療報酬として扱います(東京都主税局「医療法人等に係る所得金額の計算書 記載の手引」)。

事業税が課税される診療収入

公的な保険制度に基づかない収入は、医療行為であっても事業税の課税対象です。代表的なものを表にまとめます。

区分 主な収入の例
自由診療 医科:美容皮膚科、AGA治療、自費のワクチン接種など/歯科:インプラント、矯正、セラミックなどの自費補綴
自賠責保険の診療 交通事故の治療で損害保険会社から受け取る報酬
労災保険の診療 仕事中のけがの治療で受け取る報酬
健診・予防 人間ドック、企業健診、特定健康診査の委託料、妊婦・乳児健診、予防接種の委託料など
介護関連の委託料等 主治医意見書の作成料など、医療系サービス以外の介護関連収入
保険外の自己負担 差額ベッド代、診断書などの文書料
その他 サプリメント・歯ブラシなどの物販収入、医業に付随する課税対象の雑収入

注意したいのは自賠責と労災です。消費税では自賠責・労災の診療も非課税ですが、事業税では課税されます。「保険で支払われる診療だから事業税も非課税」と考えて社会保険診療報酬に含めてしまうと、申告内容が誤ったものになります。市区町村から受け取る特定健診や予防接種の委託料も、公的な事業ですが社会保険診療報酬には含まれません。

なお、社会保険診療報酬に該当しない収入でも、都道府県独自の減免制度が適用される場合があります。例えば神奈川県では、県や県内市町村から委託された母子保健法に基づく健康診査やがん検診などについて、申請により個人事業税の減免を受けられます(神奈川県「個人事業税」)。対象事業と申請期限は、所在地の都道府県に確認してください。

医科と歯科では、課税収入の中身も変わります。医科は健診・予防接種や自費の美容診療が中心になり、歯科はインプラントや矯正など1件あたりの金額が大きい自費診療が中心です。歯科で自費診療の割合が高い医院は、事業税の負担が医科より大きくなりやすいので、収入区分を毎月きちんと分けて記録しておくと、申告時に慌てずに済みます。

個人開業医の事業税の計算方法

個人開業医の事業税は「事業の所得から社会保険診療報酬分の所得を除き、事業主控除を引いて税率をかける」という流れで計算します。税率と控除、所得の分け方、概算経費を使う場合、具体的な計算例の順に説明します。

事業税の税率と事業主控除

以下は、年間を通じて医業・歯科医業を営み、他の課税事業や損失の繰越控除等がない場合の基本式です。

個人事業税 =(青色申告特別控除前の事業所得 - 社会保険診療報酬分の所得 - 事業主控除290万円)× 税率5%

控除後の金額が0円以下の場合、税額は0円です。課税標準は1,000円未満、税額は100円未満を切り捨てます。

事業主控除は、事業を1年間続けた個人なら誰でも差し引ける年290万円の控除です。年の途中で開業・廃業し、事業期間が1年に満たない場合は月割りになります(1か月未満の端数は1か月として数えます)。医業・歯科医業の税率は5%です(東京都主税局「個人事業税」)。

事業所得は原則として所得税の計算を基礎にしますが、事業税独自の調整があります。代表的な違いは、青色申告特別控除(最大65万円)を差し引けないことです。所得税で差し引いた青色申告特別控除は、事業税の計算では所得に足し戻します。一方、青色事業専従者給与は事業税でも経費として認められます。

事業税の所得の分け方

社会保険診療報酬分の所得をどう計算するかには、主に次の2つの方法があります。

方法 計算方法 向いているケース
区分経理 日々の記帳で社保分と自由診療分の収入・経費を分け、それぞれの所得を計算する 自費の技工料・材料費など、自由診療にだけかかる経費が大きい医院
収入按分 区分経理をしていない場合に、所得(青色申告特別控除前)を社保収入の割合で按分する 経費の区分が難しく、収入の内訳だけがはっきりしている医院

区分経理をしていない個人開業医は、収入按分で計算するのが一般的です(大阪府「個人事業税Q8」)。収入按分は計算が簡単な一方、自費のインプラントのように技工料が高い診療が多い歯科医院では、実際より自由診療側の所得が大きく計算されることがあります。区分経理を採用するかどうかは、記帳の手間と税額の差を比べて決めます。なお、東京都に主たる病院・診療所等がある医療法人は、原則として収入按分による計算書を提出します。ただし、措置法67条1項の特例を適用する法人には、別の記載・添付方法が定められています。

概算経費を使う場合の事業税

社会保険診療報酬が年5,000万円以下で、医業・歯科医業の収入が年7,000万円以下の場合、所得税では概算経費の特例(措置法26条)を選べます。

概算経費の特例を使っても、社保分の所得が事業税の課税対象外となる点は変わりません。ただし、特例を適用する場合は自由診療側の所得を別に計算するため、特例を使わない場合の収入按分とは事業税額が異なることがあります。有利不利は、所得税・住民税に加え、事業税への影響も含めて確認します。概算経費が有利かどうかは、【ツール】概算経費(措置法26条)簡易計算ツールで目安を確認できます。

事業税の計算シミュレーション

年間の医業・歯科医業収入8,000万円・経費5,600万円の医院で、収入の内訳が違う2つのケースを計算します。両ケースとも医業・歯科医業収入が7,000万円を超えるため、措置法26条の特例は適用対象外です。年間を通じて事業を営み、損失の繰越控除等はなく、社保分の所得は収入按分で計算するものとします。事業所得は青色申告特別控除前の金額です。

項目 ケースA:内科(社保中心) ケースB:歯科(自費多め)
社会保険診療報酬 7,000万円 5,000万円
自由診療などの収入 1,000万円 3,000万円
経費 5,600万円 5,600万円
事業所得 2,400万円 2,400万円
社保収入の割合 87.5% 62.5%
社保分の所得(非課税) 2,100万円 1,500万円
社保分を除いた所得(事業主控除前) 300万円 900万円
事業主控除 ▲290万円 ▲290万円
課税標準 10万円 610万円
個人事業税(5%) 5,000円 30万5,000円
(参考)非課税を適用しない場合 105万5,000円 105万5,000円

事業所得が同じ2,400万円でも、社保中心の内科は事業税がほとんどかからず、自費の多い歯科は約30万円かかります。仮に社保分の所得が除外されず、事業所得全額をもとに計算された場合、どちらのケースも事業税は105万5,000円となります。ケースAでは、本来の税額との差額は105万円です。

※実際の税額は100円未満切り捨てなどの端数処理があり、経費の区分によっても変わります。

確定申告で事業税の非課税が反映されるしくみ

個人事業税は、申告資料などをもとに都道府県が税額を決定し、納税通知書で知らせるしくみです。所得税の確定申告書または住民税の申告書を提出した場合は、原則として個人事業税の申告書を別に提出する必要はありません。ただし、年の途中で廃業した場合などは別の申告手続があるため、都道府県税事務所に確認してください。

医師・歯科医師の場合、青色申告決算書(または収支内訳書)に「医師及び歯科医師用」の付表を添付し、収入を「社会保険診療報酬」と「自由診療収入」などに分けて記載します。都道府県は、こうした申告資料の区分をもとに社保分の所得を除いて事業税を計算します。都道府県によっては、医療所得の内訳書などの補足資料を求められることもあります。

準備の手順は次のとおりです。

  1. 1年間の収入を「社会保険診療報酬」と「それ以外の収入」に分けて集計する。社会保険診療報酬は、支払基金・国保連合会の支払通知書と窓口の一部負担金の記録から、税引前の金額で集計する。年末の未収分も確認する
  2. 区分経理または収入按分で、社保分の所得を計算する(計算方法は前の章を参照)
  3. 付表の収入欄に、社保分と自由診療分を分けて記載する。自賠責・労災・健診・予防接種などは社保分に含めない
  4. 青色申告決算書と付表を確定申告書に添付して提出し、集計の内訳資料を保存しておく

すでに届いた納税通知書の金額に疑問があるときは、都道府県税事務所に計算の内訳を確認してください。個人事業税は都道府県が税額を決める税金なので、窓口は税務署ではなく都道府県税事務所です。税額を直してもらえる期間には期限があるため、気づいた時点で早めに連絡します。

医療法人の事業税と社会保険診療報酬

医療法人にかかる法人事業税でも、社会保険診療報酬の非課税は適用されます。医療法人ならではの軽減措置もあわせて説明します。この章では、社会医療法人を除く医療法人について説明します(社会医療法人には医療保健業に関する別の非課税の取扱いがあるため、個別の確認が必要です)。

医療法人も社会保険診療報酬は非課税

医療法人の法人事業税でも、社会保険診療報酬に対応する所得は課税の対象から外れます。対象となる診療報酬の範囲は個人の場合と同じで、自由診療・自賠責・労災・健診などの収入には課税されます。

個人と違う点は、申告の方法です。医療法人は決算のたびに、法人税の申告とは別に法人事業税・住民税の申告書を都道府県へ提出します。東京都に主たる病院・診療所等がある医療法人は、原則として「医療法人等に係る所得金額の計算書」を添付し、収入割合に基づいて社保分の所得を計算します。ただし、措置法67条1項の特例を適用する医療法人は、この計算書の添付が不要で、別の記載・添付方法が定められています。所得税の概算経費にあたる特例として医療法人には措置法67条の特例がありますが、この場合も事業税では社保分の所得が非課税になる点は変わりません。

特別法人の軽減税率と外形標準課税

医療法人は法人事業税で「特別法人」として扱われ、社保以外の所得にも一般の株式会社より低い税率が適用されます。

所得の区分 医療法人(特別法人) 一般の法人(参考)
年400万円以下の部分 3.5% 3.5%
年400万円超800万円以下の部分 4.9% 5.3%
年800万円超の部分 4.9% 7.0%

※令和4年4月1日以後に開始する事業年度の標準税率。東京都では、医療法人の法人事業税の課税標準となる年所得額が2,500万円を超える場合、超過税率(年400万円以下の部分は3.75%、年400万円超の部分は5.23%)が適用されます。

※資本金または出資金が1,000万円以上で、3以上の都道府県に事務所・事業所を設けて事業を行う法人は、軽減税率が適用されず、所得全額に標準税率4.9%(東京都の超過税率は5.23%)がかかります。

※この表は、軽減税率が適用される法人の法人事業税の標準税率です。一般の法人欄は、外形標準課税の対象外の法人を想定しています。医療法人には別途、標準税率で計算した法人事業税所得割額の34.5%の特別法人事業税がかかります(東京都主税局「特別法人事業税」)。個人と法人の負担を比較する際は、この税金と事業主控除の有無も含めて試算する必要があります。

医療法人は、資本金1億円超の法人などにかかる外形標準課税の対象にもなりません。外形標準課税は赤字でも給与総額や資本金の額に応じて税金がかかるしくみですが、医療法人はこの負担を受けません。

個人開業医の事業税は5%の一律税率で事業主控除290万円があり、医療法人は事業主控除がない代わりに軽減税率です。自由診療の割合が高い医院ほど、医療法人化で事業税の負担がどう変わるかを試算する価値があります。法人化を検討する目安はクリニックの医療法人化のタイミング|所得1800万が目安で解説しています。

当事務所では、税理士・行政書士の両資格を活かし、医療法人の設立手続きから運営まで一貫してサポートしています。事業税を含めた法人化の試算や、医療法人化に関するご相談はお気軽にお問い合わせください。

事業税の払いすぎを防ぐ3つの確認点

納税通知書の金額が想定より高いと感じたら、次の3点を確認してください。あわせて、赤字の年に起きやすいズレも説明します。

確認点1:申告資料の社保・自由診療の区分

まず確認したいのが、確定申告書に添付した付表(医師及び歯科医師用)などで、社会保険診療報酬と自由診療収入が正しく分かれているかです。都道府県は収入区分に加え、経費の配分や概算経費の特例の適用状況なども踏まえて所得を計算するため、区分がずれると税額もずれます。シミュレーションのケースAで社保分が除外されずに計算されると、本来の税額との差額は105万円です。

税理士に申告を任せている場合も、控えの付表で社保分と自由診療分の金額を確認してください。自由診療や健診の割合が増えた年、会計ソフトや税理士を変えた年は、特に区分のずれが起きやすくなります。

確認点2:社保収入の集計漏れ

社会保険診療報酬として集計する金額が少ないと、その分だけ非課税になる所得も小さくなります。支払基金・国保連合会からの振込額だけを集計していないか、次の点を確認します。

  • 源泉徴収される前の税引前の金額で集計しているか、年末の未収診療報酬を含めているか
  • 窓口で受け取った患者の一部負担金
  • 生活保護や、難病法・障害者総合支援法などに基づく公費負担医療の報酬
  • 介護保険の訪問看護・居宅療養管理指導などの医療系サービスの報酬

反対に、自賠責・労災の診療報酬や特定健診・予防接種の委託料を社保に含めると、本来課税される所得まで非課税として申告してしまいます。後から誤りを指摘されると追加で納税することになるので、区分は正確に分けます。

確認点3:所得の分け方

収入按分で計算していると、自由診療にだけかかる経費が大きい医院では、課税される所得が実態より大きくなることがあります。たとえば自費のインプラントや矯正の技工料・材料費は自由診療のためだけの経費ですが、収入按分では社保分と自由診療分に収入の割合で振り分けられてしまいます。

収入按分と区分経理でどの程度の差が生じるかは、自由診療の割合だけでなく、社保診療と自由診療それぞれの利益率や経費の構成によって変わります。自由診療専用の材料費・外注費を会計ソフトで部門を分けて記帳しておくと、区分経理を検討するときの材料になります。区分経理の扱いは都道府県によって異なることがあるため、採用する前に税理士や都道府県税事務所に確認してください。

事業税の繰越欠損金は所得税と違う

赤字の年は、所得税(法人税)と事業税で、翌年以降に繰り越せる赤字の金額が一致しないことがあります。

事業税では、社保分の所得を除いたあとの所得で計算するため、繰り越せる赤字も社保以外の部分だけになります。たとえば、収入按分で計算する医院で、事業税計算上の按分前の赤字が1,000万円、社保収入の割合が80%の場合、社保以外に対応する赤字は200万円となります。実際の繰越額は、区分経理の有無や各税目の調整によって確認する必要があります。

個人開業医の通常の営業損失は、損失が生じた年分について期限内に青色申告をし、その後も連続して申告している場合に、翌年以降3年間繰り越せます。災害で事業用資産に生じた損失には別の繰越制度があります。開業初年度や大型の医療機器を買った年に赤字が出ると、翌年は「所得税は繰り越した赤字で0円になったのに、事業税の納税通知書は届いた」ということが起こりえます。所得税と事業税で別々に繰越額を管理しておくと、翌年以降の納税額を予測しやすくなります。

【まとめ】事業税の社会保険診療報酬非課税を解説しました

この記事の重要ポイントは次の5つです。

  • ・社会保険診療報酬に対応する所得は、個人事業税・法人事業税のどちらでも非課税である
  • ・自由診療・自賠責・労災・健診・予防接種の委託料などの収入は、医療行為であっても事業税の課税対象である
  • ・個人開業医の事業税は、繰越控除等がない場合、「青色申告特別控除前の事業所得-社保分の所得-事業主控除290万円」に税率5%をかけて計算する
  • ・個人開業医の事業税は、確定申告書に添付する付表(医師及び歯科医師用)などの収入区分をもとに都道府県が計算する。社保と自由診療の区分が税額を左右する
  • ・医療法人は特別法人の軽減税率が適用され、外形標準課税の対象にもならない

今すぐできる行動は次の3つです。

  1. 昨年の確定申告書の控えを出し、付表(医師及び歯科医師用)の社会保険診療報酬と自由診療収入の金額を確認する
  2. 納税通知書の事業税額と、この記事の計算式で出した金額を比べる
  3. 大きく違う場合は、都道府県税事務所か税理士に相談する

当事務所は医療機関専門の税理士事務所として、日々の記帳から確定申告、6か月ごとの決算予測まで一貫してサポートしています。顧問税理士がいる場合でも、月額5,000円〜(税抜)のセカンドオピニオンサービスで、事業税を含めた申告内容の確認をご依頼いただけます。税務に関するご相談はお気軽にお問い合わせください。

当事務所の対応エリアは対応エリア|医科・歯科クリニックに強い税理士でご確認いただけます。

よくある質問(FAQ)

Q1. 社会保険診療報酬の非課税は申請しないと適用されませんか?

この非課税措置について、適用を認めてもらうための特別な申請は不要です。ただし、申告資料には社会保険診療報酬とそれ以外の収入・所得を正しく反映する必要があります。都道府県は確定申告書や付表などをもとに計算し、必要に応じて補足資料を求めます。納税通知書の金額に疑問があるときは、都道府県税事務所に確認してください。

Q2. 自由診療だけのクリニックでも事業税はかかりますか?

自由診療による所得は、原則として個人事業税の対象です。ただし、年間を通じて事業を営む場合は事業主控除290万円などがあるため、必ず税額が発生するわけではありません。

Q3. 住民税や国民健康保険料も社会保険診療報酬分は非課税になりますか?

この非課税措置は事業税に関するものです。個人開業医の住民税や国民健康保険料の計算では、社会保険診療報酬に係る所得も原則として計算の対象になります。

※2026年10月1日時点の情報です。

この記事を書いた人

松村 洋佑(まつむら ようすけ)

税理士(登録番号 145479)/行政書士(登録番号 24083412)

松村洋佑税理士・行政書士事務所 代表。医科・歯科クリニックの税務顧問を専門とし、開業支援から医療法人化・事業承継まで一貫して対応しています。東京都練馬区・西武新宿線武蔵関駅徒歩3分。

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