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令和7年に基礎控除と給与所得控除が変わったばかりですが、令和8年分も再び改正されます。基礎控除は最大104万円、給与所得控除の最低保障額は74万円になり、給与収入178万円までは所得税がかかりません。扶養に入れる年収の上限や、10月に変わる社会保険の加入基準も動きます。この記事では、令和8年分の控除額と令和7年からの変更点、年末調整で経理担当者が押さえるべき実務を、クリニックの事例で税理士が解説します。
■ この記事の結論(先にお伝えします)
令和7年に基礎控除と給与所得控除が大きく見直されたばかりですが、令和8年(2026年)分もふたたび改正されます。「去年変わったのに、また?」と戸惑う院長先生や経理担当の方も多いはずです。
今回の改正の背景にあるのは物価高への対応です。物価が上がると、同じ手取りでも生活は苦しくなります。そこで令和7年改正のときに、物価の上昇に合わせて基礎控除などを引き上げる仕組みが組み込まれました。今回はその仕組みに沿った引き上げで、令和8年12月1日に施行され、令和8年分以後の所得税に適用されます(出典:国税庁「令和8年度税制改正による所得税の基礎控除の引上げ等について」)。
ただし、月々の給与から差し引く源泉所得税は11月まで従来のままです。改正分は令和8年12月の年末調整でまとめて精算するため、給与担当者にとっては「年末調整で何が変わるか」が本題になります。
この記事では、令和8年分の給与所得控除と基礎控除がいくらになるのか、令和7年から何が変わったのか、扶養や社会保険の判定にどう影響するのかを、クリニックの事例を交えて整理します。令和7年分の内容は「令和7年の給与所得控除と基礎控除を税理士が解説【2025年版】」にまとめています。
令和8年分のポイントは次の3つです。
上乗せ部分は令和8年・令和9年分だけの期間限定です。社会保険料がかかる「130万円の壁」は今回も動いていません。所得税の壁だけを見て働き方を決めると、思わぬ手取り減につながります。
令和8年の「年収の壁」早見表(給与収入のみの人)
| 年収の目安 | 何の壁か | 令和8年分の扱い |
|---|---|---|
| 106万円 | 社会保険(短時間労働者の加入) | 2026年10月1日から月8.8万円の賃金要件が撤廃。従業員51人以上の事業所では週20時間以上が主な判定基準に |
| 130万円 | 社会保険(配偶者の扶養から外れる) | 変更なし |
| 136万円 | 所得税(扶養親族・配偶者控除に入れる上限) | 令和7年の123万円から引き上げ(所得要件62万円) |
| 178万円 | 所得税(本人に所得税がかかり始める) | 令和7年の160万円から引き上げ |
| 197万円 | 所得税(特定親族特別控除が使える上限) | 令和7年の188万円から引き上げ |
| 207万円 | 所得税(配偶者特別控除が使える上限) | 令和7年の約201万円から引き上げ |
クリニックでは院長やスタッフの給与だけでなく、扶養内で働く配偶者・パート職員の年収調整に影響します。まず表で自分に関係する壁を確認し、詳しい中身は以下で押さえていきましょう。
給与所得控除は、給与収入から差し引ける「会社員の必要経費」にあたる部分です。令和8年分では、この控除の下限額が引き上がりました。
給与収入が少ない人向けの最低保障額が、令和7年分の65万円から74万円に上がります。内訳は、恒久的な引き上げ分の69万円に、令和8年・令和9年分だけの特例5万円を上乗せした金額です。令和10年分以降は特例が終わり、69万円になる予定です。
パートや扶養内で働く人の多くはこの最低保障額の範囲に入るため、令和8年の改正でいちばん影響を受けるのがこの部分です。
給与所得控除額は給与収入に応じて次のように計算します(令和8年・令和9年分)。
| 給与収入(年間) | 給与所得控除額 |
|---|---|
| 220万円未満 | 74万円 |
| 220万円以上〜360万円以下 | 収入×30%+8万円 |
| 360万円超〜660万円以下 | 収入×20%+44万円 |
| 660万円超〜850万円以下 | 収入×10%+110万円 |
| 850万円超 | 195万円(上限) |
最低保障額74万円は給与収入220万円未満の人に適用され、220万円以上は計算式で求めます。上限額195万円(給与収入850万円超)は令和7年分から変わりません。
計算表を見るより実際の手取りを知りたい場合は、当事務所の「給与計算ツール(手取り自動計算)」で総支給額を入れると、社会保険料・源泉所得税・住民税を差し引いた金額を確認できます。
基礎控除は、すべての納税者が使える所得控除です。令和8年分では合計所得金額に応じて手厚くなり、最大104万円まで拡充されました。
基礎控除がいくらになるかは「合計所得金額」で決まります。つまずきやすいのが「収入」と「所得」の違いです。
会社員やパートの場合、必要経費にあたるのが給与所得控除です。給与収入が200万円なら、給与所得控除74万円を引いた126万円が給与所得(合計所得金額)になります。基礎控除の金額は、収入そのものではなく、この所得の金額で判定します。
令和8年・令和9年分の基礎控除額は次のとおりです。給与収入だけの人が自分の区分を探しやすいよう、国税庁の資料にある給与収入換算の目安も添えています。
| 合計所得金額 | 給与収入の目安 | 所得税の基礎控除 |
|---|---|---|
| 489万円以下 | 665万5,556円以下 | 104万円 |
| 489万円超〜655万円以下 | 665万5,556円超〜850万円以下 | 67万円 |
| 655万円超〜2,350万円以下 | 850万円超〜2,545万円以下 | 62万円 |
本則(恒久的な金額)は62万円です。合計所得655万円以下の人には期間限定の上乗せがあり、489万円以下の人は一律104万円まで拡充されます。この上乗せは令和8年・令和9年分だけの特例で、令和10年分以降は、合計所得132万円以下の人が99万円、それ以外は62万円に戻る予定です。
住民税の基礎控除は今回の改正で引き上げられていません。所得税の基礎控除が増えても住民税は同じようには減らない点は、後の実務ポイントで触れます。
令和7年分と比べると、各区分で控除額が増えています。
| 合計所得金額 | 令和7年分 | 令和8・9年分 |
|---|---|---|
| 132万円以下 | 95万円 | 104万円 |
| 132万円超〜336万円以下 | 88万円 | 104万円 |
| 336万円超〜489万円以下 | 68万円 | 104万円 |
| 489万円超〜655万円以下 | 63万円 | 67万円 |
| 655万円超〜2,350万円以下 | 58万円 | 62万円 |
中所得層(合計所得132万円超489万円以下)は、令和7年より大きく拡充され、一律104万円になります。
令和8年の改正でよく話題になるのが「178万円の壁」です。ただし、壁は所得税だけではありません。社会保険の壁は別のルールで動くため、全体像を押さえておきましょう。
給与収入だけの人の場合、基礎控除と給与所得控除を足した金額までは所得税がかかりません。令和8年・令和9年分は次のようになります。
令和7年分は「基礎控除95万円+給与所得控除65万円=160万円」でしたので、非課税ラインが18万円上がった形です。パート職員が「103万円まで」と考えていた時代から、2年で75万円も動いています。
ここが最大の注意点です。所得税がかからないラインは178万円まで上がりましたが、社会保険の扱いは別のルールで決まります。
従業員数の要件は当面残ります。2027年10月に36人以上、2029年10月に21人以上、2032年10月に11人以上へ段階的に下がる予定です。従業員50人以下のクリニックでは、10月以降も正社員のおおむね4分の3(週30時間程度)が加入の目安のままで、週20時間基準はまだ適用されません。
つまり、規模の大きい医療法人では「年収を106万円未満に抑えれば社会保険に入らずに済む」という調整が10月以降は使えなくなり、パート職員のシフトを週20時間で区切るかどうかが新しい判断軸になります。所得税の壁が178万円まで上がったからといって、社会保険の壁とセットで考えないと、かえって手取りが減るケースが出てきます。
基礎控除や給与所得控除の引き上げは、「家族を扶養に入れられるか」の判定にも影響します。院長先生のご家族や、扶養内で働くスタッフに関係する部分です。令和8年分は所得要件そのものも動くため、令和7年の数字のまま覚えていると判定を誤ります。
扶養親族や同一生計配偶者になるための合計所得金額の要件は、令和7年分の58万円以下から、令和8年分は62万円以下に引き上げられます。給与収入だけの人なら、給与所得控除74万円を足して給与収入136万円以下が目安です。令和7年の123万円から13万円広がります(出典:国税庁「令和8年分 年末調整のしかた」昨年と比べて変わった点)。
ひとり親控除の対象になる生計を一にする子の所得要件も同じく62万円以下に、勤労学生控除の所得要件は89万円以下(給与収入163万円以下)に引き上げられます。
この改正は令和8年12月1日以後に支払う給与から適用されます。新たに扶養の要件を満たす家族がいる場合は、年末調整までに扶養控除等(異動)申告書を出し直してもらう必要があります。
配偶者の所得要件が62万円になると、令和7年分まで配偶者特別控除の対象だった「合計所得58万円超62万円以下」の配偶者は、令和8年分から配偶者控除の対象に移ります。配偶者特別控除は合計所得62万円超133万円以下(給与収入136万円超207万円以下)が対象で、上限の133万円は変わりません。控除額そのものは変わらないため、年末調整の申告書で区分を書き分けるときに注意が要る程度の変更です。
大学生年代(19歳以上23歳未満)のお子さんがアルバイトをしている場合の「特定親族特別控除」は、対象が合計所得62万円超123万円以下(給与収入136万円超197万円以下)になります。満額63万円が使えるのは合計所得85万円以下で、給与収入に換算すると159万円までです。令和7年の150万円・188万円から、給与所得控除の引き上げ分だけ9万円ずつ上がる計算です。
お子さんのバイト代が増えても、いきなり扶養から外れて親の税金が跳ね上がることを避けられる仕組みは同じです。
このほか令和8年度改正では、ひとり親控除が35万円から38万円に引き上げられました。ただし適用は令和9年分以後で、令和8年の年末調整には影響しません。
給与が高い院長先生には、控除が縮小・調整される仕組みがあります。ここも確認しておきましょう。
基礎控除の本則62万円と上乗せは、合計所得金額が2,350万円以下の人が対象です。これを超えると基礎控除は段階的に減り、最終的にゼロになります。
| 合計所得金額 | 基礎控除額 |
|---|---|
| 2,350万円超〜2,400万円以下 | 48万円 |
| 2,400万円超〜2,450万円以下 | 32万円 |
| 2,450万円超〜2,500万円以下 | 16万円 |
| 2,500万円超 | 0円(基礎控除なし) |
この高所得帯の金額は令和7年分から変わっていません。開業医で所得の大きい方は、基礎控除が使えない、または少額になる点に注意が必要です。個人開業の院長は給与ではなく事業所得で判定するため、医業収入から経費を引いた後の金額でこの表を見ます。
給与収入が850万円を超える人でも、次のいずれかに当てはまる場合は、給与所得から一定額を追加で差し引けます。
控除額は「(給与収入-850万円)×10%」で計算し、給与収入1,000万円を超える場合は1,000万円で頭打ちになります(最大15万円)。医療法人の理事長や勤務医など、給与で報酬を受け取る子育て世代の医師が対象になりやすい控除です。この控除の仕組みは令和8年分でも変更ありません。
23歳未満の扶養親族がいる人には、令和8年・令和9年分だけの新しい特例もあります。一般の生命保険料控除(新契約分)の上限が4万円から6万円に広がるもので、保険料控除申告書に「23歳未満の扶養親族の有無」を書く欄が設けられます。お子さんのいるスタッフには記入を促してください。
実際の金額をイメージできるよう、クリニックでよくある3つのケースで見てみます(給与収入だけの人を想定)。
ケース1:扶養内で働くパート職員(給与収入150万円・週22時間勤務)
所得税はゼロでも、社会保険料の負担で手取りは変わります。年収の壁の相談を受けたら、このケースのように所得税と社会保険を分けて説明するとスタッフに伝わりやすくなります。
ケース2:常勤の医療事務スタッフ(給与収入500万円)
所得税率10%の人なら、年末調整の還付額が令和7年より3万6千円ほど増える計算です。
ケース3:院長(給与収入900万円・医療法人の理事長)
賞与を含めた年間の手取りを試算したい場合は「賞与計算ツール(手取り自動計算)」で賞与分の社会保険料・源泉所得税を確認できます。
中所得層(合計所得489万円以下)は基礎控除が一律104万円まで拡充されるため、令和8年・令和9年分の恩恵がとくに大きくなります。
改正を正しく給与計算に反映するために、経理担当者が押さえておきたいポイントをまとめます。
今回の改正は令和8年12月1日施行のため、令和8年1月〜11月の給与から差し引く源泉所得税は、改正前の税額表のままで問題ありません。基礎控除の上乗せや給与所得控除の特例5万円は、令和8年12月の年末調整で、改正後の「給与所得控除後の給与等の金額の表」を使って1年分の税額を計算し直し、月々の源泉徴収額との差額を精算します。給与ソフトを使っている場合は、年末調整の計算モジュールが令和8年分の改正に更新されているかを11月までに確認しておきます。改正後の金額を月次にも反映した源泉徴収税額表が使われるのは、令和9年分以後の給与からです。
従業員から回収する申告書も令和8年分から様式が変わります。主な変更点は次のとおりです。
書き方が変わる部分をスタッフに周知しておくと、年末調整の差し戻しを減らせます。最新の様式と記載例は国税庁の「令和8年分 各種申告書の記載のしかた」で確認できます。
所得税の基礎控除が最大104万円になっても、住民税の基礎控除は今回の改正で引き上げられていません。給与所得控除の最低保障額74万円は住民税にも及びますが、適用は令和9年度分(令和9年6月から天引きされる分)からで、引き上げ額9万円のうち5万円は2年間の時限措置です。「所得税がかからない=住民税もかからない」ではない点と、効果が出る時期が1年ずれる点をスタッフに説明できるようにしておきましょう。
基礎控除の上乗せと給与所得控除の特例5万円は令和8年・令和9年分だけの措置です。令和10年分以降は本則の金額(基礎控除62万円・給与所得控除の最低保障69万円)に戻る予定で、非課税ラインも下がります。物価連動の仕組みにより今後も見直されるため、年収の壁の目安は毎年確認する前提でスタッフに伝えるのが安全です。
給与収入が2,000万円を超える人は年末調整の対象外です。医療法人の理事長でこれに当たる場合は、確定申告で基礎控除などを適用します。個人開業の院長は給与ではなく事業所得なので、もともと確定申告で基礎控除を受けます。複数の病院から給与を受けている勤務医や、開業医の副収入の扱いは「医師の確定申告|複数勤務・副業」で解説しています。
当事務所では給与計算・年末調整の代行も行っています。令和8年分の様式変更やパート職員の年収調整への対応など、給与業務に関するご相談はお気軽にお問い合わせください。
令和8年の給与所得控除と基礎控除について、重要なポイントを整理します。
まず取り組みたいのは、扶養内で働くパート職員の年収と週の労働時間を「所得税」と「社会保険」の両面で確認することです。次に、令和8年の年末調整に向けて、給与ソフトと申告書の様式が最新版に更新されているかをチェックしておきましょう。
当事務所は医療機関専門の税理士事務所として、日々の記帳から給与計算・年末調整、確定申告まで一貫してサポートしています。練馬区・西東京市など対応エリアのクリニックはもちろん、オンラインでも対応しますので、お気軽にお問い合わせください。
※令和8年9月8日時点の情報です。
Q1. 令和8年の基礎控除はいくらですか?
合計所得金額489万円以下なら104万円、489万円超655万円以下は67万円、655万円超2,350万円以下は62万円です。上乗せ部分は令和8年・9年分だけの特例です。
Q2. 令和8年の給与所得控除の最低保障額はいくらですか?
74万円です。本則69万円に令和8年・9年分の特例5万円を加えた金額で、給与収入220万円未満の人に適用されます。令和10年分以降は69万円に戻る予定です。
Q3. 「178万円の壁」を超えても大丈夫ですか?
所得税は給与収入178万円までかかりませんが、社会保険の130万円の壁は残ります。2026年10月からは従業員51人以上の事業所で週20時間以上なら年収に関係なく社会保険に入るため、年収と労働時間の両方で確認が必要です。
Q4. 令和8年の月々の給与で源泉徴収する所得税は変わりますか?
令和8年1月〜11月の給与は改正前の税額表のままです。基礎控除の上乗せなどは令和8年12月の年末調整で精算します。改正を反映した源泉徴収税額表は令和9年分以後の給与から使います。
Q5. 扶養に入れる年収の上限はいくらになりますか?
令和8年分は合計所得62万円以下、給与収入なら136万円以下が目安です。令和7年の123万円から13万円上がります。ただし社会保険の扶養は年収130万円未満の基準が別にあるので、両方を確認してください。
この記事を書いた人
松村 洋佑(まつむら ようすけ)
税理士(登録番号 145479)/行政書士(登録番号 24083412)
松村洋佑税理士・行政書士事務所 代表。医科・歯科クリニックの税務顧問を専門とし、開業支援から医療法人化・事業承継まで一貫して対応しています。東京都練馬区・西武新宿線武蔵関駅徒歩3分。
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