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医療法人にとって、取引先や紹介元との関係づくりは診療体制の安定に直結します。一方で、会食や贈答などの交際費は、税務上の取り扱いを誤ると損金不算入や追徴につながりかねません。とくに1人あたり1万円以下の飲食費は交際費等から除外(=全額損金)、接待飲食費の50%損金、中小法人の年間800万円まで全額損金といった特例の使い分けは、重要な論点です。さらに、持分なし医療法人では“みなし資本金等”で中小判定を行う必要があり、ここを見落とすと制度選択を誤ります。
本記事では、
交際費の定義と会議費・福利厚生費との線引き
1万円基準・50%損金・中小特例(800万円)の使い方
持分なし医療法人の中小判定の考え方
税務調査で指摘されやすい保存書類の要件とNG例
を、医療法人の実務に沿ってわかりやすく解説します。「誰と・何の目的で・いくら使ったか」を明確にし、適格な処理を選べるようにしていきましょう。
得意先・仕入先・紹介元など事業関係者への接待・供応・慰安・贈答のための支出が「交際費等」です。原則は損金不算入(経費にならない)ですが、後述の例外(中小特例/飲食費特例/少額飲食費)があります。
少額飲食費の基準が引上げ:1人当たり1万円以下の飲食費は交際費等から除外(= 全額損金算入)。2024/4/1以降の支出が対象。書類保存が要件です。
特例の延長
接待飲食費の50%損金算入(大企業含む)
中小法人の“800万円まで全額損金”特例
いずれも3年延長(~2027/3/31開始事業年度まで)。
保存要件(少額飲食費 1万円以下):①日時 ②相手先の氏名/名称と関係 ③参加人数 ④金額・店名/所在地(領収書の記載でも可)— これらの記載書類を保存していることが必要です。
1人1万円以下の少額飲食費 → 全額損金算入(交際費等に該当しない)。保存要件を満たすこと。
接待飲食費の50%損金 → すべての法人で可(※超大企業の一部除く)。1万円超の飲食でも50%は損金。
中小特例(年800万円まで全額損金) → “中小法人”に該当すれば、交際費等(飲食費以外の贈答等も含む)を年800万円まで損金算入可能(または50%特例のどちらか選択)。
通常は資本金または出資金が1億円以下で「中小法人」判定。
資本や出資を“有しない”医療法人(= 持分なし)は、次の算式の60%で“資本金等相当額”をみなし、これが1億円以下かで判定します:
〔期末総資産 − 期末総負債 − 当期純利益〕 × 60%
例:純資産3億円・黒字1千万円 → (総資産−総負債−1,000万円)×60% ≒ 1.74億円 → 1億円超のため中小特例×。この場合、①少額飲食費の全額損金と②飲食費50%のみ使え、贈答等は原則不算入です。
交際費等:紹介元医療機関との会食、取引業者への贈答、開院・開設周年で外部招待を伴う接待等。
会議費:会議目的が明確で、社内外の情報交換・打合せのための軽食・弁当等(1人1万円以下なら「交際費等から除外」にも該当し得る)。議事・参加者の記録が鍵。
福利厚生費:従業員の慰安目的(院内の慰安会・永年勤続など従業員等一律の飲食や慶弔見舞金等)は交際費等から除外され福利厚生費。外部先の参加があると交際費等に傾きます。
相手は事業関係者(外部)? → YESなら交際費等候補。NO(従業員等のみ)なら福利厚生費。
飲食費の1人当たりが1万円以下? → YESなら交際費等から除外(= 全額損金)。NOなら50%損金(飲食) or 中小特例(該当時は800万円枠)。
贈答・接待ゴルフ等の“飲食以外”か? → 飲食50%特例は使えない。中小特例の800万円枠でのみ救済(中小でない医療法人は不算入)。
少額飲食費の書類不備(参加者名・人数の欠落)→ 交際費等に逆戻り。
従業員慰安と外部招待を混在 → 全体が交際費等になりやすい。社内行事は社内完結が安全。
持分なし医療法人の“みなし資本金等”の見落とし → 中小特例を使えると思って申告ミス。算式で1億円超なら800万円枠×。
1人当たり8,000円 → 少額飲食費として全額損金(保存要件の書類を作成)。
1人当たり20,000円 → 交際費等。
中小該当なら:800万円枠で全額損金に算入可能(枠内)。
中小×なら:飲食費50%のみ損金(20,000円)。
従業員慰安が目的 → 福利厚生費として交際費等から除外(過度・一部者のみ優遇は要注意)。
飲食費ではない交際費等 → 飲食50%特例は不可。
中小のみ:800万円枠で損金化可。中小×:原則不算入。
1万円/人以下は“会議費的”に全額損金(交際費等から除外)— 要件書類が命。
1万円超の飲食は50%損金、贈答等は原則不算入。中小なら800万円枠。
持分なし医療法人はみなし資本金等=(総資産−総負債−当期純利益)×60%で1億円超か判定。超えたら中小特例×となります。
医療法人の交際費の経費処理については持分なしの場合は特殊になることがあります。
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