賃上げ促進税制を税理士が解説(2025年版)

はじめに

 

 賃上げ促進税制は、前期より給与総額を増やした事業者に対し、その増加額の一定割合を法人税(または所得税)から控除できる仕組みです。
対象期間は、法人は2024年4月1日~2027年3月31日の間に開始する各事業年度個人事業主は2025年~2027年の各年が対象です。
制度は「全企業向け」「中堅企業向け」「中小企業向け」の3区分があり、企業規模に応じていずれか1つを選択します(併用不可)。

3つの区分と控除率

  • 全企業向け:継続雇用者の給与が前期比3%/4%/5%/7%以上で、控除率10%/15%/20%/25%。教育訓練の上乗せ+5%、子育て・女性活躍認定で+5%。上限は税額の20%。

  • 中堅企業向け継続雇用者の給与が前期比3%→10%4%→25%。上乗せ+5%(教育訓練)+5%(子育て・女性活躍)、上限は税額の20%。

  • 中小企業向け雇用者の給与が前期比1.5%→15%2.5%→30%。上乗せ+10%(教育訓練)+5%(子育て・女性活躍)、上限は税額の20%。使い切れない控除は5年間繰越可(新設)

キーワードの整理

  • 雇用者給与等支給額:国内の全従業員に支給した給与・賞与の合計から、雇用調整助成金等の特定助成金を控除した額。

  • 継続雇用者:前期・当期の全月で雇用保険の一般被保険者で給与支給がある国内従業員(パート・アルバイト含む、役員等は除外)。

  • 増加額に乗じる:控除率は「(当期−前期)の給与増加額」に乗じます(控除上限は税額の20%)。

中小企業が押さえるべき3つの強み

  • 低いハードル:1.5%増で15%控除、2.5%増で30%控除

  • 上乗せ最大+15%:教育訓練(+10%)+子育て・女性活躍(+5%)=最大45%

  • 5年繰越:使い切れない分を最長5年繰り越し可能(当期も給与が前期超であること等の要件あり)。

具体例(中小企業・年額イメージ)

  • 前期の雇用者給与:2億円

  • 当期の雇用者給与:2億5百万円2.5%増=500万円増

  • 教育訓練要件クリア(前期比+10%かつ当期給与の0.05%以上)、えるぼし等の認定も取得とする。

税額控除率

  • 基本 30%(2.5%増)+教育訓練 +10%+女性活躍 +5%45%
    控除額の計算

  • 500万円 × 45% = 225万円(ただし税額の20%が上限。超えた分は中小企業なら繰越可)

実務での“よくある落とし穴”

  • 新設期は不可:前期がないと判定できないため適用できません。

  • 役員等は対象外:役員・特殊関係者は算定から外します(従業員はパート等も含む)。

  • 20%上限の壁:控除額は税額の20%が上限。余剰は中小企業なら繰越、他区分は繰越なし。

  • 助成金や代理返還の扱い

    • 奨学金の代理返還給与等に含められる取扱い。

    • 社会保険適用促進手当も給与に含めることが可能。

どの区分を選ぶ?

  • 資本金10億円以上かつ従業員1,000人以上、または従業員2,000人超 → 原則「全企業向け」(一部届出必要)。

  • 上記以外で、従業員2,000人以下かつグループ1万人超に該当しない → 「中堅企業向け」の可能性。

  • 資本金1億円以下または個人事業主(従業員1,000人以下) → 「中小企業向け」。

よくある質問

 

Q. 賃上げの基準に使う“継続雇用者”って?
A. 前期・当期の全月で
雇用保険の一般被保険者で給与支給のある国内従業員を指します(役員除外、パート等は含む)。

 

Q. どれくらいまで控除できる?
A. 法人税(または所得税)の20%が上限。中小企業は上限超過分を5年繰越できます。

 

Q. 教育訓練の“上乗せ”条件は?
A. 前期比+10%(中小企業は+5%)かつ当期給与の0.05%以上の教育訓練費が必要(税額控除率は全企業・中堅は+5%、中小は+10%上乗せ)。

 

Q. 子育て・女性活躍の“上乗せ”条件は?
A. プラチナくるみん/プラチナえるぼし等の取得(区分により対象基準がやや異なります)。

まとめ

 

 給与増を“投資”として後押しする実質的な税額控除。人材の育成にも活用できますので効果は高いです。

 医科・歯科の個人クリニックまたは医療法人においても前期比で給与増している場合には適用できる可能性が高いです。繰越も可能ですのでご確認ください。

 弊所では賃上げ促進税制の判定も行っております。ぜひお気軽にお問い合わせください。

本記事は2025年9月時点の公表情報に基づいています。期首・従業員数・助成金の受給状況等で適用可否や有利不利が変わります。

 

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