ふるさと納税の上限金額|開業医と個人事業主の調べ方

ふるさと納税の上限金額は、シミュレーターに年収を入れれば出てきます。ところが開業医や個人事業主の場合、その年収がいくらになるかは12月まで確定しません。会社員向けの説明をそのまま当てはめると、上限を超えて自己負担が膨らむことがあります。この記事では、上限金額の決まり方と正確な調べ方を税理士が解説し、事業所得のある人がどう見積もればよいかまでお伝えします。年内に判断できる基準がわかります。

■ この記事の結論(先にお伝えします)

  • 上限金額を決めるのは年収(所得)・家族構成・各種控除の3つ。基準になるのは前年ではなく寄附する年の所得である
  • 控除は所得税・住民税の基本分・住民税の特例分の3つに分かれ、特例分に住民税所得割額の20%という枠があるため上限が生まれる
  • 開業医や個人事業主は12月まで所得が確定せず、医療費控除や小規模企業共済を使うと上限がさらに下がる。余裕を持った金額に抑えるのが安全である
  • 上限を1円でも超えた分は全額が自己負担になる。答え合わせは翌年6月の住民税決定通知書でできる
  • 寄附の期限は12月31日、ワンストップ特例の申請書は翌年1月10日必着である

ふるさと納税の控除上限額とは

通帳とお金

ふるさと納税は、自分が選んだ自治体へ寄附をすると、その金額から自己負担分を除いた額が税金から差し引かれる制度です。ここではまず、なぜ「上限」があるのかを整理します。

自己負担2,000円で寄附できる上限がある

ふるさと納税で寄附をすると、寄附額から2,000円を引いた金額が所得税と住民税から控除されます。1万円を寄附すれば8,000円が戻り、実質的な負担は2,000円です。返礼品を受け取れるため、多くの人が利用しています。

ここで気をつけたいのが、「税金の前払い」ではないという点です。ふるさと納税は寄附であり、その寄附に対して税金が軽くなる仕組みです。控除しきれない金額があっても、それは戻ってきません。

自己負担が2,000円で収まる寄附額には上限があります。これを控除上限額と呼びます。上限を超えて寄附した分は、税金が減らずにそのまま持ち出しになります。

控除は所得税・住民税基本分・住民税特例分の3つに分かれる

上限が生まれる理由は、控除の内訳にあります。寄附額は次の3つに分けて計算されます(総務省 ふるさと納税のしくみ)。

控除の種類 計算方法
所得税からの控除 (寄附額−2,000円)を所得控除
住民税からの控除(基本分) (寄附額−2,000円)×10%
住民税からの控除(特例分) 上の2つで控除しきれなかった残り

問題は3つ目の特例分です。特例分には「住民税の所得割額の20%まで」という枠が設けられており、この枠を使い切った時点で、それ以上寄附しても税金は減りません。

つまり控除上限額とは、住民税の所得割額の2割を使い切るまでの寄附額ということになります。年収が高く納める住民税が多い人ほど、上限も大きくなります。

上限額を決める3つの要素

オフィスのデスク

上限額は人によって違います。同じ年収でも金額が変わるのは、次の3つが影響するためです。

年収(いつの年収か・額面か所得か)

まず押さえたいのが、基準になるのは「寄附をする年」の所得という点です。2026年に寄附するなら、2026年1月から12月までの所得で決まります。前年の所得ではありません。

ここが会社員でも間違えやすいところです。多くの人は前年の源泉徴収票を見て試算しますが、それはあくまで目安です。転職・昇給・産休などで収入が変われば、上限も変わります。

「年収」という言葉にも注意が必要です。シミュレーターが求めているのは、手取りではなく源泉徴収票の「支払金額」、つまり額面の給与収入です。個人事業主の場合は給与収入がないため、所得金額(売上から必要経費を引いた後)で計算します。この違いを取り違えると、上限額が大きくずれます。

家族構成

配偶者や扶養親族がいると、その分の所得控除が増えます。控除が増えれば課税所得が下がり、住民税の所得割額も下がるため、上限額は小さくなります

たとえば同じ年収でも、共働きで子どもがいない人と、配偶者を扶養している人では上限が変わります。「共働き」「夫婦」「共働き+子1人」といった区分がシミュレーターにあるのは、この計算のためです。

なお、共働きで配偶者控除・配偶者特別控除を受けていない場合は、扶養がいない人と同じ扱いになります。

各種控除(住宅ローン・医療費控除・小規模企業共済など)

3つ目が、その他の控除です。次のような控除を使っていると、課税所得が下がる分だけ上限額も下がります。

  • 住宅ローン控除
  • 医療費控除
  • 生命保険料控除、地震保険料控除
  • iDeCoや小規模企業共済の掛金
  • 扶養控除、障害者控除

開業医の場合、小規模企業共済で年84万円を掛けていれば、その分だけ課税所得が減り、ふるさと納税の上限は下がります。節税策を組み合わせるほど上限が縮む、という関係になっています。

シミュレーターの簡易版はこれらを反映していません。控除が多い人ほど、簡易版の数字は実際より大きく出ます。

年収別の上限額の目安

会計作業中のノートパソコン

正確な金額は個別に計算するしかありませんが、まず桁を掴むには目安表が役立ちます。当事務所のふるさと納税シミュレーター(令和7年の給与所得控除・基礎控除の改正に対応)で計算した目安が次のとおりです。

共働き・子どもなしの場合

配偶者控除を受けていない世帯の目安です。

給与収入 控除上限額の目安
400万円 約37,000円
500万円 約58,000円
700万円 約106,000円
1,000万円 約175,000円
1,500万円 約367,000円
2,000万円 約518,000円

配偶者を扶養している場合

配偶者控除を受けている世帯は、控除が増える分だけ上限が下がります。

給与収入 控除上限額の目安
400万円 約29,000円
500万円 約46,000円
700万円 約83,000円
1,000万円 約165,000円

給与収入が1,200万円前後を超えると、本人の合計所得が1,000万円を超えて配偶者控除の対象から外れるため、上の表と同じ金額になります。

いずれも社会保険料を給与収入の15%と仮定し、給与収入だけがある人を前提にした金額です。医療費控除や住宅ローン控除を使っている人、事業所得がある人はここから離れます。高校生や大学生の子どもを扶養している場合も下がります。目安表は「だいたいこのくらい」を知るためのもので、寄附額を決める根拠にはなりません。

上限額の正確な調べ方

書類と電卓

目安表で桁を掴んだら、次は自分の数字で確かめます。手順は4つあります。

源泉徴収票のどの欄を見るか

会社員や勤務医であれば、源泉徴収票が計算のもとになります。シミュレーターに入れるのは次の欄です。

入力する項目 源泉徴収票の該当欄
年収 支払金額(いちばん左の金額。手取りではありません)
社会保険料 社会保険料等の金額
扶養家族 控除対象扶養親族の数、控除対象配偶者の有無

源泉徴収票が手元に届くのは12月の給与明細と一緒か、翌年1月です。年末ぎりぎりになるため、それを待ってから寄附先を選ぶのは現実的ではありません。

前年の源泉徴収票で年内に試算する

そこで実務的なのが、前年の源泉徴収票で試算し、少なめに寄附しておく方法です。収入が前年と大きく変わらないなら、この方法で十分に近い数字が出ます。

昇給や転職で収入が増えた年は上限も上がるので、前年ベースの金額なら超える心配はありません。逆に収入が減った年は上限も下がるため、前年ベースで寄附すると超過します。減収の年こそ慎重に見積もってください。

住民税決定通知書で答え合わせをする

寄附が正しく控除されたかは、翌年6月ごろに届く住民税決定通知書で確認できます。「税額控除額」の欄に、ふるさと納税による控除が反映されています。

自己負担が2,000円で収まったかを検算するには、次の考え方を使います。

  • 所得税分:確定申告なら還付、ワンストップ特例なら住民税に上乗せ
  • 住民税分:決定通知書の税額控除額

寄附額から2,000円を引いた金額と、控除された合計額がほぼ一致していれば、上限内に収まっています。控除額のほうが少なければ、その差額は自己負担になっています。

シミュレーターを使う

各ポータルサイトや総務省が用意しているシミュレーターも使えます。使うときは簡易版でなく詳細版を選んでください。簡易版は年収と家族構成しか入れられず、医療費控除や住宅ローン控除が反映されないためです。

当事務所でもふるさと納税の上限金額シミュレーターを公開しています。令和7年の改正に対応し、給与所得控除や所得金額調整控除も織り込んで計算できます。

開業医・個人事業主の上限額の考え方

明るいクリニックの待合室

ここまでは給与収入のある人の話です。事業所得がある場合は、計算の前提そのものが変わります。ふるさと納税の解説記事はほとんどが会社員向けなので、この章で押さえてください。

事業所得は年の途中で上限が読めない

会社員の年収は、9月ごろには着地がおおよそ見えます。事業所得はそうはいきません。12月末の売上と経費が固まるまで、その年の所得は確定しないからです。

クリニックであれば、冬の感染症の流行しだいで12月の保険診療収入が動きます。年末に医療機器を購入すれば、減価償却費や少額減価償却資産の特例で所得が一気に下がります。にもかかわらず、ふるさと納税の寄附は12月31日までに済ませなければなりません。

上限が読めないまま期限が来る、という構造的な難しさがあります。対処法は次のとおりです。

  • 11月末時点の試算所得で上限を計算する。12月の利益は上乗せの安全余裕として見ない
  • 上限の8割程度に抑える。多少ずれても自己負担が増えない
  • 決算対策と同時に考える。年末の設備投資や共済の掛金を決めてから寄附額を決める

医療費控除・小規模企業共済と併用すると上限が下がる

事業をしている人ほど、所得控除を多く使っています。控除が増えれば課税所得が下がり、住民税の所得割額も下がるため、ふるさと納税の上限は連動して下がります

たとえば小規模企業共済で年84万円を掛け、iDeCoも併用し、年末に医療費控除も使う——という人は、シミュレーターの簡易版が出す金額より上限がかなり低くなります。節税策を積むほど、ふるさと納税の枠は縮みます。

この関係を知らずに簡易版の数字で寄附すると、上限を超えます。控除を多く使っている人ほど、詳細版で計算するか税理士に確認してください。

医療法人の役員報酬だけなら給与所得者と同じ

医療法人化している場合、理事長個人の収入は役員報酬、つまり給与所得です。役員報酬以外に収入がなければ、計算は会社員とまったく同じになります。

役員報酬は事前に金額を決めて期中は変更できないため、個人開業のときより上限が読みやすくなります。法人化のあとは、この点だけはシンプルになります。

当事務所は医療機関専門の税理士事務所として、日々の記帳から確定申告、6か月ごとの決算予測まで一貫してサポートしています。年末の所得見込みと合わせた寄附額の判断についても、お気軽にご相談ください。

12月に慌てないためには、事前に所得の着地を掴んでおくことです。当事務所の6か月ごとの決算予測を使えば、ふるさと納税の判断も年内に余裕を持って進められます。

上限を超えたらどうなる?注意したいポイント

落ち着いたクリニックの待合室

上限を超えても罰則はありません。ただ、その分のお金は戻ってきません。よくあるつまずきを3つ挙げます。

超えた分は自己負担になる

控除上限額を1円でも超えると、超えた金額はそのまま自分の持ち出しになります。3万円が上限の人が5万円を寄附すれば、差額の2万円は税金が減らないまま出ていきます。

もっとも、返礼品は受け取れます。返礼品の調達価格は寄附額の3割以内と決められているため、2万円分の超過に対して受け取れるのは6,000円程度の品です。差し引きでは損になります。

「少し超えるくらいなら」と考えず、上限の8割程度で止めるのが安全です。

住宅ローン控除との併用に注意

住宅ローン控除を使っている人は、特に注意が必要です。住宅ローン控除は所得税から直接差し引く税額控除で、ふるさと納税の所得税分の控除と枠を取り合う関係になります。

所得税から引ききれなかった住宅ローン控除は住民税からも引かれますが、こちらにも上限があります。結果として、住宅ローン控除の額が大きい人は、ふるさと納税の効果が想定より小さくなることがあります。

併用ができないわけではありません。ただ、シミュレーターの簡易版では反映されないため、必ず詳細版で住宅ローン控除の金額を入れて計算してください。

超えたかどうかを確認する方法

寄附した年の翌年6月に届く住民税決定通知書で確認します。見るのは「税額控除額」の欄です。

寄附額から2,000円を引いた金額と、実際に控除された合計額(所得税の還付分+住民税の控除分)を比べます。控除額のほうが小さければ、その差が自己負担として上乗せされていたことになります。

もし超過していたら、翌年は寄附額を下げてください。その年の超過分をあとから取り戻す方法はありません。

手続きと期限(ワンストップ特例と確定申告)

卓上カレンダー

上限額の中で寄附しても、手続きを忘れると控除は受けられません。方法は2つあります。

ワンストップ特例が使える条件と1月10日必着

ワンストップ特例は、確定申告をせずに住民税から控除を受けられる仕組みです。使えるのは次の条件をすべて満たす場合です(国税庁 タックスアンサー No.1155)。

  • 確定申告をする必要がない給与所得者であること
  • 1年間の寄附先が5自治体以内であること
  • 寄附するたびに、各自治体へ申請書を提出していること

申請書の提出期限は、寄附した翌年の1月10日必着です。年末に駆け込みで寄附すると、書類の準備が間に合わないことがあります。12月の寄附ほど早めに申請してください。

同じ自治体に複数回寄附した場合、自治体の数は1つと数えますが、申請書は寄附のたびに提出する必要があります。

なお、ワンストップ特例では所得税の還付はなく、全額が住民税から控除されます。控除の合計額は確定申告した場合とほぼ同じです。

確定申告が必要な人

次に当てはまる人はワンストップ特例を使えないため、確定申告で寄附金控除を申告します。

  • 個人事業主・開業医(もともと確定申告をするため)
  • 寄附先が6自治体以上の人
  • 医療費控除や住宅ローン控除の初年度など、確定申告をする給与所得者
  • 給与が2か所以上ある人、副業所得が20万円を超える勤務医

ここに落とし穴があります。ワンストップ特例を申請した後に確定申告をすると、特例は無効になります。 医療費控除のために確定申告をしたら、ふるさと納税の控除が消えていた、という事故が毎年起きます。確定申告をするなら、寄附金控除も必ず一緒に申告してください。

確定申告では、自治体から届く寄附金受領証明書か、ポータルサイトが発行する寄附金控除に関する証明書を使います。

よくある質問(FAQ)

上限額は前年の年収で計算するのですか?

いいえ。寄附をする年の所得で決まります。2026年に寄附するなら2026年の所得です。ただし年内は所得が確定しないため、実務では前年の源泉徴収票や試算値をもとに、少なめに寄附するのが一般的です。

シミュレーターの金額どおりに寄附して大丈夫ですか?

簡易版の金額をそのまま使うのは危険です。簡易版は年収と家族構成しか反映しておらず、医療費控除・住宅ローン控除・小規模企業共済の掛金などが計算に入っていません。控除が多い人ほど、実際の上限は簡易版より低くなります。詳細版を使ってください。

個人事業主でもふるさと納税はできますか?

できます。上限額は給与収入ではなく、売上から必要経費を引いた事業所得をもとに計算します。確定申告をするためワンストップ特例は使えず、申告書の寄附金控除の欄に記載する形になります。

医療費控除と一緒に使えますか?

使えます。ただし医療費控除で課税所得が下がる分、ふるさと納税の上限も下がります。両方を予定しているなら、医療費控除を織り込んだうえで上限を計算してください。

上限を超えたかどうかは、いつわかりますか?

翌年6月ごろに届く住民税決定通知書の「税額控除額」で確認できます。寄附額から2,000円を引いた金額より控除額が少なければ、その差は自己負担になっていたことになります。

年末ぎりぎりの寄附でも間に合いますか?

寄附そのものは12月31日までに決済が完了していれば、その年の分になります。ただしワンストップ特例の申請書は翌年1月10日必着なので、年末の寄附は申請が間に合わないことがあります。日程が厳しいときは、確定申告に切り替えるほうが確実です。

まとめ

窓辺のオフィス
  • ふるさと納税の控除上限額は、年収(所得)・家族構成・各種控除の3つで決まる
  • 基準になるのは前年ではなく、寄附をする年の所得である
  • 上限が生まれるのは、住民税特例分に所得割額の20%という枠があるためである
  • 開業医や個人事業主は12月まで所得が確定せず、控除を積むほど上限が下がる
  • 上限を超えた分は全額が自己負担となり、あとから取り戻す方法はない

ふるさと納税は、上限額の中で使えば確実に得をする制度です。会社員なら源泉徴収票を見れば済みますが、事業所得がある人は年の途中で上限を読みにくく、節税策と枠を取り合う関係にもあります。11月末までに所得の着地を掴み、上限の8割程度に抑えて寄附するのが安全です。

当事務所は医科・歯科クリニック専門の税理士事務所として、日々の記帳から確定申告、6か月ごとの決算予測まで一貫してサポートしています。年末の所得見込みと、ふるさと納税や共済をどう組み合わせるかも含めて、ご相談は無料でお受けしています。お気軽にお問い合わせください。

→ 無料相談のお問い合わせはこちら
→ 当事務所の対応エリア

※2026年8月30日時点の情報です。

この記事を書いた人

松村 洋佑(まつむら ようすけ)

税理士(登録番号 145479)/行政書士(登録番号 24083412)

松村洋佑税理士・行政書士事務所 代表。医科・歯科クリニックの税務顧問を専門とし、開業支援から医療法人化・事業承継まで一貫して対応しています。東京都練馬区・西武新宿線武蔵関駅徒歩3分。

→ 代表者プロフィール → 無料相談はこちら

お電話でのお問合せ・相談予約

03-6279-7483
080-3596-7599

<受付時間>
9:00~18:00
※土曜・日曜・祝日は除く

フォームは24時間受付中です。お気軽にご連絡ください。