累進課税とは?日本の所得税の仕組みを税理士がやさしく解説

 所得が増えるほど、手元に残るお金の伸びが鈍く感じられます。原因は所得税の累進課税です。日本の所得税は5%から45%まで7段階に分かれていますが、階段を1つ上がっても、税率が上がるのは超えた部分だけです。この記事では、超過累進の仕組みと限界税率の考え方、課税所得別の税額の目安を税理士が解説します。読み終えると、自分がいまどの段にいて、控除や共済を使うとどれだけ効くのかを判断できるようになります。

■ この記事の結論(先にお伝えします)

  • 日本の所得税は5%から45%までの7段階の累進課税です。所得が階段を1つ上がっても、超えた部分にだけ高い税率がかかる超過累進なので、全体の税率が跳ね上がるわけではありません
  • 住民税の所得割は累進ではなく原則一律10%(市区町村民税6%+都道府県民税4%)です
  • 所得税には復興特別所得税2.1%が上乗せされます(令和19年分まで)
  • 課税所得400万円の所得税は約38万円、800万円なら約123万円。いま自分がどの税率の段にいるか(限界税率)を知ることが、控除や共済を使う判断の出発点になります

累進課税とは?基本の仕組みをやさしく解説

累進課税とは、所得や財産などの金額が大きくなるほど税率が高くなる課税方式です。日本では、所得税のほか相続税・贈与税にもこの仕組みが採用されています。

単純累進課税と超過累進課税の違い

累進課税には「単純累進課税」と「超過累進課税」の2種類があります。単純累進課税は、一定の金額を超えると所得全体に高い税率をかける方式です。超過累進課税は、超えた部分にだけ高い税率をかける方式です。

日本の所得税・相続税・贈与税では、超過累進課税が採用されています。そのため、所得が増えて税率区分が1段階上がっても、これまでの所得部分の税額が急に増えることはありません。

「限界税率」の考え方

超過累進課税のもとでは、新たに稼いだ部分に対して適用される税率のことを「限界税率」と呼びます。たとえば課税所得が695万円を超えて900万円以下の区分に入った場合、税率が上がるのは695万円を超えた部分だけです。695万円以下の部分には、引き続き低い税率が適用されます。

「所得が増えたら手取りが減った」と感じる方もいますが、これは限界税率の仕組みを誤解しているケースがほとんどです。実際には、税率区分が上がっても手取りの総額が減ることはありません。

所得税などが累進課税に適用される理由

累進課税が採用されている理由は、税負担を「担税力」に応じて公平に配分するためです。担税力とは、税金を負担できる経済的な能力を指します。所得が多い人ほど、生活に必要な支出を除いた余裕資金が多くなるため、高い税率を負担する余地があります。

累進課税には、所得の再分配という役割もあります。所得が多い人からより多くの税を集め、社会保障などを通じて還元することで、所得格差を緩和する効果があります。

一方で「所得が増えるほど税負担が重くなり、働く意欲が下がる」という指摘もあります。ただし前のセクションで説明した通り、税率が上がるのは超えた部分だけです。所得が増えれば、税負担が増えても手取りの総額は必ず増えます。

日本の所得税は7段階の累進課税

日本の所得税は、分離課税を除く総合課税について、5%から45%までの7段階に分かれた超過累進課税です。国税庁が公表している「速算表」を使うと、税額を簡単に計算できます。

所得税の速算表(課税される所得金額に対して)

課税される所得金額 税率 控除額
195万円以下 5% 0円
195万円超~330万円以下 10% 97,500円
330万円超~695万円以下 20% 427,500円
695万円超~900万円以下 23% 636,000円
900万円超~1,800万円以下 33% 1,536,000円
1,800万円超~4,000万円以下 40% 2,796,000円
4,000万円超 45% 4,796,000円

税額の計算式は「所得税額=課税される所得金額×税率-控除額」です(1,000円未満は切り捨て)。控除額は、超過累進課税の計算を簡略化するために設けられた数値で、区分ごとの税率差を調整する役割を持っています。

さらに、計算した所得税額には復興特別所得税として2.1%が上乗せされます。平成25年(2013年)から令和19年(2037年)までの各年分の確定申告で、所得税と併せて申告・納付が必要です。

住民税(所得割)は累進課税ではなく原則一律10%

住民税の所得割は、所得税とは異なり累進課税ではありません。原則として税率は一律10%(市区町村民税6%+都道府県民税4%)で、課税総所得金額に一律にかかります(均等割など別途かかる部分は除きます)。

そのため、所得が低いうちは所得税より住民税の方が負担が重く感じられることがあります。所得税は最低税率5%からスタートするのに対し、住民税は最初から10%かかるためです。所得が増えて所得税の税率が住民税の10%を上回る段階になると、負担が逆転します。

具体例で見る累進課税の税額シミュレーション

以下は「課税される所得金額」(所得控除を差し引いた後の金額)をもとにした所得税額の概算例です。実際の税額は、住宅ローン控除などの税額控除や、個人の所得控除の内容によって変わります。

課税所得400万円の場合

  • 所得税(速算表):400万円×20%-427,500円=372,500円
  • 復興特別所得税:372,500円×2.1%=約7,800円
  • 合計:約380,300円

課税所得800万円の場合

  • 所得税:800万円×23%-636,000円=1,204,000円
  • 復興特別所得税:1,204,000円×2.1%=約25,300円
  • 合計:約1,229,300円

課税所得2,000万円の場合

  • 所得税:2,000万円×40%-2,796,000円=5,204,000円
  • 復興特別所得税:5,204,000円×2.1%=約109,300円
  • 合計:約5,313,300円

課税所得が400万円、800万円、2,000万円と増えるにつれて、適用される税率区分も上がっていきます。ただし、高い税率がかかるのはあくまで各区分を超えた部分だけです。ここに住民税(原則10%)や税額控除(住宅ローン控除など)を加減して、最終的な税負担が決まります。

累進課税のメリット・デメリット

累進課税には、メリットとデメリットの両方があります。

メリットは、所得の多い人がより多くの税を負担することで、所得の再分配が進み、社会全体の格差が緩和される点です。所得が少ない人ほど税負担率が低くなるため、生活に必要な支出を圧迫しにくいという側面もあります。

デメリットは、所得が増えるほど手取りの増加ペースが緩やかになる点です。高所得層では、追加で得た所得の半分近くが税金(所得税+住民税)として差し引かれる区分もあります。また、所得税は個人の所得全体に累進で課税されるのに対し、法人税は所得水準にかかわらず一定の税率区分に収まるため、所得が一定水準を超えると、個人で受け取るより法人化した方が税負担を抑えられるケースがあります。

開業医の場合も同様で、個人としての所得が一定水準を超えると、所得税・住民税の負担が法人税の実効税率を上回ることがあります。累進課税の仕組みを理解しておくことは、法人化を検討するタイミングを判断する材料の一つになります。目安となる所得水準はクリニックの医療法人化のタイミング|所得1800万が目安で詳しく解説しています。

2025年(令和7年)以降の基礎控除引き上げが税額に与える影響

令和7年分の所得税から、基礎控除が合計所得金額に応じた段階的な区分に見直されました。令和8年分以後も同じ金額体系が適用されます。

合計所得金額 基礎控除額
132万円以下 95万円
132万円超336万円以下 58万円
336万円超489万円以下 68万円
489万円超655万円以下 63万円
655万円超2,350万円以下 58万円
2,350万円超2,400万円以下 48万円
2,400万円超2,450万円以下 32万円
2,450万円超2,500万円以下 16万円
2,500万円超 0円

多くの給与所得者が該当する年収帯(合計所得金額655万円超2,350万円以下)では、基礎控除は58万円です。これは従来の原則48万円から10万円引き上げられた水準にあたります。基礎控除が増えると課税所得金額が下がるため、所得税・住民税の負担が軽くなる方向に働きます。

これに伴い、給与の源泉徴収税額表や年末調整の計算方法も改正されています。令和8年度税制改正では令和8年12月1日以後の源泉徴収事務にも変更が生じるため、勤務先の年末調整や確定申告の際は最新の様式・税額表を確認してください。

令和7年分・令和8年分それぞれの金額を年収別に詳しく知りたい方は、令和7年の給与所得控除と基礎控除を税理士が解説【2025年版】令和8年の給与所得控除と基礎控除はいくら?前年比で解説もあわせてご覧ください。

2026年8月20日時点の情報です。

累進課税と向き合うための注意点・対策

累進課税についてよくある誤解を整理すると、次の2点です。

  • 税率が上がるのは「超えた部分」だけで、所得全体に高い税率がかかるわけではない
  • 住民税の所得割は累進課税ではなく、原則一律10%

これらを踏まえたうえで、累進課税のもとで税負担を適正化する方法はいくつかあります。ふるさと納税やiDeCo(個人型確定拠出年金)などの制度を活用すると、所得控除や税額控除を通じて課税所得金額を抑えられます(控除上限額の考え方はふるさと納税の上限金額の確認方法を税理士が解説を参照してください)。また、医療費控除・扶養控除・配偶者控除などの所得控除、住宅ローン控除などの税額控除の有無によって、最終的な税額は大きく変わります(医療費控除については医療費控除を税理士がわかりやすく解説【2025年版】で詳しく解説しています)。年末調整や確定申告では、こうした控除を漏れなく反映することが欠かせません。

さらに、所得水準が高くなり適用税率が33%や40%といった区分に入ってくると、個人で所得を受け取り続けるより、法人化して報酬設計を見直した方が税負担を抑えられる場合があります。開業医の場合は、医療法人化がその代表的な選択肢です。法人化のメリット・デメリットは医療法人設立のメリット・デメリットを税理士が解説!で詳しく解説しています。

当事務所では、税理士・行政書士の両資格を活かし、医療法人の設立手続きから運営まで一貫してサポートしています。医療法人化に関するご相談はお気軽にお問い合わせください。

よくある質問(FAQ)

 

Q. 累進課税と一律課税(比例課税)の違いは何ですか?

累進課税は所得が増えるほど税率が上がる方式です。一律課税(比例課税)は所得にかかわらず同じ税率が適用される方式で、日本の住民税(所得割)はこちらに該当します。

Q. 所得が増えて税率区分が上がると、手取りが減ることはありますか?

超過累進課税のもとでは、税率が上がるのは超えた部分だけなので、所得が増えれば手取りの総額も必ず増えます。ただし、税率区分の境目付近では手取りの増加ペースが緩やかになります。

Q. 累進課税は所得税以外にも適用されますか?

適用されます。相続税・贈与税にも超過累進課税が採用されています。

Q. 累進課税による税負担を軽くする方法はありますか?

ふるさと納税やiDeCoなどの控除制度を活用すること、医療費控除・扶養控除・配偶者控除などの所得控除や、住宅ローン控除などの税額控除を漏れなく反映することが基本です。所得水準が高い場合は、法人化による報酬設計の見直しも選択肢の一つです。

【まとめ】累進課税の仕組みを解説しました

  • 累進課税は、所得が増えるほど税率が段階的に上がる課税方式である
  • 日本の所得税は5%〜45%の7段階の超過累進課税で、高い税率がかかるのは各区分を超えた部分のみである
  • 住民税の所得割は累進課税ではなく、原則一律10%である
  • 令和7年分(2025年分)から基礎控除が段階的な区分に見直され、所得水準によって最大95万円まで適用されるケースがある
  • 所得水準が高くなった場合は、各種控除の活用や法人化による報酬設計の見直しが、税負担を抑える選択肢となる

当事務所は医療機関専門の税理士事務所として、日々の記帳から確定申告、6か月ごとの決算予測まで一貫してサポートしています。税務に関するご相談はお気軽にお問い合わせください。

この記事を書いた人

松村 洋佑(まつむら ようすけ)

税理士(登録番号 145479)/行政書士(登録番号 24083412)

松村洋佑税理士・行政書士事務所 代表。医科・歯科クリニックの税務顧問を専門とし、開業支援から医療法人化・事業承継まで一貫して対応しています。東京都練馬区・西武新宿線武蔵関駅徒歩3分。

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